練習目的

  • 両手の指間の拡大と各指の独立の獲得
  • 柔軟な手首の使い方の習得
  • 音符が多い中で旋律と対旋律を同時に奏でるポリフォニックな奏法の習得
  • 多声部を確実に統制する能力の獲得(奏法、頭脳どちらも)
  • 音符が多い中におけるカンタービレ表現の追求

以上の目的を達成するために幅の広いアルペジョを弾き、なおかつポリフォニックな旋律をカンタービレに浮かび上がらせる曲となっています。ショパンエチュードにはこの曲をさらっていることが前提となる曲が非常に多いので、まずはこの曲から勉強することをおすすめします。この曲をしっかり練習することで、下記のような効果が得られ、初~中級者にとって非常に効果が高い練習曲といえます。

  • オクターブがいままでよりずっとラクに届くようになります。
  • 1-4や1-3といった指でオクターブが届くようになります。
  • ぎりぎり届いていた音が、きちんと届くようになります。
  • ぎりぎり届かなかった音が、なんとか届くようになります。
  • 右手和音のトップ、左手和音のボトムをはっきりと鳴らせるようになります。つまり両手の小指で弾く音を鳴らせるようになります。

難易度はツェルニー40番の中盤程度です。ツェルニー30番を終わってすぐでは難しいと思います。でも挑戦する価値はあります。

この曲をしっかり勉強すると、ショパンをはじめ他の作曲家のピアノ曲がとても弾きやすくなります。単独の曲としても美しいので、レパートリーに持っているとよいでしょう。レパートリーにするには、暗譜するくらい練習を積んでそこでおしまいではなく、ときどき弾いてみるとよいと思います。時間が経つと忘れますので。


練習方法

1.和声と旋律の把握

2.両手でゆっくり弾いてみて難所を把握

3.練習アイディアの提案

1.和声と旋律の把握

両手一緒に弾くとむずかしいので、右手の旋律(大きい音符)と左手のアルペジョだけで弾いてみます。最初からペダルを踏んで弾きましょう。

25-1和声


4小節目の最後にちょっと和声が変わるところとかはop.10-1と同じです。そうです、この曲はop.10-1を下地にして、うんと難易度を下げ、なおかつ両手とも同時に練習できるようにした改良版です。しかも234の指が黒鍵にくる、弾きやすい変イ長調になっています。op.10が難しすぎると批判されたので、より低い難易度で効果の高い練習曲を作ったと思われます。

op.10-1が弾けない人でもこの曲なら弾けます。ツェルニー30番ではこんなに大きなアルペジョの曲はないのでぜひとも練習したいですね。


2.ゆっくり弾いて難所を把握

次に両手で弾きます。

同じようなアルペジョが続くので、譜読みはそれほど難しくないと思います。まずはいろいろ考えないで、すべての音符を鳴らすことを第一にしてください。左手は上下するだけですが、右手は折り返しが入ります。この折り返しがポイントになります。

4:6、5:6といった左右の音符の数が一致しない小節が出てきます。ちょっといやな感じです。いまのうちに注意しておきましょう。

25-1-difficult

盛り上がる箇所ではどんどん音域が広がります。ここは大変だろうと推測できると思いますが、やり方次第でどうにでもなるので(次回に説明します)、指が届かなくても外しても諦めずとにかく最後まで音を拾っていきましょう。

25-1last

終結部がちょっと難しい。左手のトリルは要注意。この対策も次回紹介します。


3.練習アイディア

(1)手首をしなやかにする練習

10-1と全く同じ方法が通用します。旋律となる音にアクセントを付けましょう。

手首を柔らかく、しなやかに使って、目的の鍵盤の上に指を運びます。

25-1-1


(2)左右の打鍵を一致させる練習

この曲は左右の打鍵が一致しないといけないので、そのためには次のようなリズム変奏をします。この練習も、旋律となる音にアクセントを付けましょう。この練習方法は、シューベルト即興曲op.90-2など3連符が主体となるパッセージの練習にとても有効です。

25-1-2


※左右の音符が一致しない箇所の弾き方

・4:6⇒右手はそのまま。左手は16分音符単位であわせます。

・5:6⇒左手をずらし、右手の5つの音と一致させて弾きます。一致させる位置をいろいろ変えると非常によい練習になります(意外と難しいです)。1小節の中で一致させる位置を次々と変えられるようになると、5:6で正確に弾けるようになります。ただ、この曲は5:6を正確に弾くことが目的ではないので、予備練習の段階ではそこにこだわらなくてよいと思います。


(3)小指で弾く旋律を際立たせる練習

上記(2)で自然に旋律を強調して弾けるようになると思いますが、思うように行かない場合は、ピッシュナの「指の訓練のための練習課題」を少しさらってみるとよいでしょう。少しだけにしてください。ピッシュナは弾きすぎると手を傷めることがあります(ここ重要)。


あとはおなじみハノン風の付点音符・逆付点音符での変奏や、全部フォルテ、全部ピアノでの演奏など、いろいろな変化をつけて練習していれば、だんだんスムーズに弾けるようになると思います。

付点音符変奏はとても大事なので必ずやってください。左右の音が同時に鳴らない人がよくいますが、(2)の練習や付点変奏をやればそのような欠点は必ず直ります。


右手と左手の音符の数が合わない場所は、左手を正確に弾く必要はありません。4:6は正確に弾いて欲しいですが(次回で練習法を説明します)、5:6は「なんとなく」で大丈夫です。ただし拍の頭は確実に一致させます。


次回予告

なんとか音符を拾えるようになった初心者。

しかし不意を付く内声や突然出現する跳躍など、ショパンの容赦ない追撃はつづく。

初心者は攻撃をかわし見事に弾ききることはできるのか。

次回、ショパンエチュードop.25-1:II 「哀 ロベルト・シューマン」

君は生き延びることができるか?


つづき

画像をクリックするとエンディング曲が流れますが、知ってる人少なさそう(汗)ショパン=シャア扱いですから念のため。