ショパンエチュードの解説と練習法 -ルイ・ロルティの演奏を参考に-

ショパンエチュードの各曲について解説と練習法および演奏解釈の指針を書きます。
ルイ・ロルティ(Louis Lortie)が2008年に収録した映像&音源を参考とし、他のピアニストについては適宜述べていきます。
転載される場合は連絡不要ですが、出典元としてこのブログURLの記載をお願いします。

作品10の解説

op.10-1:A - 最終話 BEST IS (NOT) AVERAGE -

B部(中間部)の演奏表現

前回「Q」において2小節あるいは8小節の表現を考えてみました。今回はもっと大きい単位での表現を考えます。和声の流れを把握していれば、8小節単位のブロックが組み合わさっていることがわかると思います。

大まかには3部形式で、A(1~16小節)⇒B(17~48)⇒A(49~68)⇒コーダ(69~79)となります。

長いB部の演奏表現がポイント、重要な課題になります。なにしろ音型が変わらないまま続きますので、そのなかで起伏をつけないと流れが見えなくなってしまいます。


まず楽譜で全体のデュナーミクを確認します。

ショパンが記したデュナーミクは、最初にフォルテで始まり、以降はcresc.+フォルテ指示が2箇所、cresc.のみが1箇所、dim.3箇所、1小節の>が1箇所、あとは「Q」で紹介したものと同様な2小節単位の<>が終結部で8小節続くだけです。この後半8小節は「最初の8小節と同じような気持ちで締めくくりなさい」と考えてよいでしょう。いずれにしても極めてデュナーミク指示が少なく、自分で表現方法を考えなければなりません。


ここでデュナーミクの基本に立ち返ります。

  • 弱い音量をより弱く、強い音量をより強くするのは技術的に困難であるとともに、聴いている人にも伝わりにくいです。
  • ゆえに、クレシェンドの前には十分に音量を落としておきます。フォルテからさらにクレシェンドするよりも、思い切ってメゾピアノくらいまで落としてからクレシェンドしたほうが効果的です。
  • クレシェンド開始と同時にいきなり全開にしないで、フォルテに向かってじわじわと上げると印象がよくなります。クレシェンドと書かれている前から音量を上げてしまう人がとても多いです。はやる気持ちをおさえ、じっとガマンしましょう。
  • クレシェンドの頂点をはっきりと表現します。fと書かれていたらffくらいに解釈してもよいと思います。曲調にもよるが、この曲はそれでOK。
  • ディミヌエンドはクレシェンドの逆で、いきなり弱くしないように注意します。どこまで、どの程度まで音量を絞るのか、あらかじめ見極めておくとよいでしょう。ピアノからさらに音量を絞るのは難しいので、メゾフォルテくらいの音量からディミヌエンドを開始できるように、その前の部分でデュナーミクを調節します。ピアノからピアニッシモに下げるような場合には、ウナコルダの使用も考えます。
  • 無段階でクレシェンドやディミヌエンドするのは難しいので、終点まで数段階に分けるイメージで弾きます。特に長いディミヌエンドでは f ⇒ mf ⇒ 中間 ⇒ mp ⇒ p のように、ディミヌエンド過程の音量設定を楽譜に書き込んでしまうとよいでしょう。理想的には1音ごと緻密に変化させるべきですが(ツェルニーはそうしろと言っています)、そうはいっても容易ではないので、1拍単位とか、ペダルを踏み変える単位で変化させます(後者がやりやすい)。音量を10段階くらいにコントロールできれば聞いている人には十分に無段階に聞こえます。
    ツェルニーはピアニストを目指す人に対して無段階を要求しているので、素人は気にしなくていいです。10段階、つまり f ⇒ mf とか mp ⇒ p の間に1クッション入る程度で十分。
  • 右ペダルを上手に使いましょう。クレシェンドするときは徐々に深く踏んで、盛大に響かせます。ディミヌエンドするときは徐々に浅くして踏み替えを増やし、響きを薄くします。後者が上手くいかない人が多いように思います(プロのピアニストでもそう)。
  • タッチを変化させることで音量と音色を同時に変化させることができますが、まずは正確な音量制御ができるようになってから考えます。
  • 誰でもいつも一番上手くいったときと同じように弾けるわけはありません。うまく弾けた時の感じをできるだけ確実に再現できるように練習するしかありません。内田光子さんですら「まれに完全に上手くいくときがある」と言ってます。上手くいくのはプロでも「まれ」だそうです(笑)。


ここからB部の私なりの演奏解釈を書いてみます。これが絶対というわけではないので、あくまでも参考にしてください。なお、楽譜はクリックすると大きくなります。

10-1-4階目2

小節No. 解説
17 ここからB部が始まります。多くのピアニストはここで音量を落としたり、ペダルを薄くします。A部が終わってB部に入ったことをわかりやすく伝えるためです。
~24 B部に入って8小節は、バスの順次進行を聞かせます。22~24小節が演奏困難な場合は、ここで少しずつテンポを落として8小節分の起承転結をつけるようなイメージに表現するとよい思います。いきなりガクっとテンポを落とすと「むずかしいから遅くした」とバレます(笑)。
23~24 左手を単音にしている=音量を落としたい、という意味です。なので、ここでディミヌエンドしたほうが良いと思います。左手は連続性を考慮してあえてオクターブで弾いて24小節で単音にする、というやり方もあります。
25~ ここから再現部まで一続きなので、演奏表現的にはここから新たなスタート地点になります。再現部に向かって拍頭の音が G ⇒Fis ⇒ F ⇒ E ⇒ Es ⇒ D ⇒ Cis ⇒ C ⇒ H ⇒ A ⇒ G ⇒ F ⇒ E ⇒ D と下がります。この長い下降音階を支えるバスと和声に対して、豊かな表現を盛り込みます。すべての音をマークすると楽譜が読みにくくなるので、トップの音だけマークしました。
25 スタート地点=新たな展開は、かなり抑えて入りましょう。この小節から、A7 ⇒Dm7 ⇒ 1拍だけD7 ⇒ G7 ⇒ C7 ⇒ Cm7。属7和音のみの和声進行でフラット系の調性に転調します。
27~28 フラット系への転調のきっかけとなる29小節のC7和音を強調したいので、そこに向かってディミヌエンドしてペダルも薄くします。
逆に29小節に向かってクレシェンドするのもいいと思います。この部分を単なるつなぎと見て何もしないのは最悪です。
29 意外性をもってC7を強調して聞かせたいので、ここでいきなりフォルテにして、ペダルをしっかり踏んで和声を響かせます。
30~33 この後33小節まではフラット系の調性です。デュナーミクは何も書かれていませんが、クレシェンド指示が入るまでは)じわじわとディミヌエンドします。そうしないと33小節からのクレシェンドに対応できません。クレシェンドのご利用は計画的に。


上記の22~23小節が特に難しいので、よく練習するようにしてください。通し練習ばかりしていると、他の部分はうまくなるのに、この部分がちっとも上達しない、ということになりがちです。わたしはいつもそうです(笑)。


さらに続けます。
ここからB部の後半になります。33~45小節の間にクレシェンド⇒フォルテ⇒ディミヌエンド⇒クレシェンド⇒フォルテと細かくデュナーミクが指示されます。この部分はきわめて重要なA部(再現部)導入の準備区間です。ここに続く46~48小節で一気に攻めて、49小節からの再現部に持ち込まなくてはなりません。


10-1-4回目3

小節No. 解説
33~35

36小節からの長いディミヌエンドにそなえて、その前に十分なクレシェンドが必要です。34小節の音程を下げながらのクレシェンドでstrettaな雰囲気を高めます。ここはフォルテまでテンポを緩めないで一気に突っ込みたいところですが、あえて溜めるのもありです(じらしのテクニック)。前後のバランスで決めてください(笑)。

36~

ここから長いディミヌエンドになります。一直線に音量を下げつづけると急にしぼんだようになるので、適度に<>を表現しながら、主にペダルによる響きの調節によって音響のサイズを縮小するイメージで、ディミヌエンドします。ペダルを1小節ベタ踏みするのをやめて、小刻みに上げ下げするとよいでしょう。
具体的には、音響を拡大したいとき=2~4拍踏み続け、縮小したいとき⇒1拍に1回程度踏み変え、のように上げ下げするペースを調節します。ペダルは完全に上げるのではなく、響きを薄くする程度の上げ方にします。響きの量をコントロールするために、ペダルを上手に使ってください。

38と40

38、40小節で4拍目をノンペダルにするようにこの楽譜(ミクリ版)は指示していますが、ナショナル・エディションではまるまる1小節伸ばしたままになっています。さまざまな資料からナショナル・エディションの指示が正当と思われますし、4小節目でいきなりノンペダルになるのは曲の流れ的にもよくありません。私の考えでは4拍目で踏み変えるのがいいと思います(ミクリの考えを含めた折衷案)。大部分のピアニストはそうやって弾いていると思います。

42~44

ここは今までとは異なった展開で、右手が1小節内で激しく上下します。パッセージの変化が大きい部分は演奏表現も大げさに、一気に盛り上げていきます。45小節に向かって左手をどんどんクレシェンド、それに合わせて右手も音量を上げ、ペダルも厚くします。また、ここから再現部まで G ⇒ F ⇒ E ⇒ D ⇒ Dis ⇒ E とトップの音を確実につなげてください。

45~46

下りアルペジョを一気呵成に弾ききると同時に、4拍目で左手の打鍵と同時にペダルを踏み変えます。いったん完全にペダルを上げて休符をしっかり聞かせます。これにより、いっそう緊張感が高まります。ナショナル・エディションではこの4分休符がカッコつきになっていますが、あったほうが断然カッコいいです。
さらにこの箇所はアルペジョのトップが D ⇒ Dis ⇒ E (47小節)と解決していく様子をくっきり聞かせる必要があるので、この3つの音がつながるようにします。同時にバスが B ⇒ B ⇒ E と進行する様子もしっかり聞かせます。ペダルを上げてもきれいつながって聞こえるように、音量やタッチに気をつけましょう。


いよいよB部の終わり~A部の再現となります。


10-4回目ラスト

小節No. 解説
47~48

E ⇒ G7 という和声進行で、49小節で再現部となります。G7=属7和音をマルカートに弾いてしっかりと聞かせたいので、48小節の頭からリタルダンドして準備します。E-dur和音のアルペジョが演奏困難な場合は46小節後半でテンポを落とし、47小節はその状態のまま(テンポを落としたまま)演奏してもかまわないと思います。でも遅いまま2小節弾くと間延びするのでがんばってテンポ維持を目指してください。

49~

めでたく再現部となります。戻ったよ!ということがわかるように、堂々と弾きましょう。ここに戻ったときのカタルシスを演出するために、延々と準備してきたのです。
ホロヴィッツやプレトニョフやカツァリスのように、こういった再現部の開始部分をわざとピアニッシモで弾いてカタルシスをはぐらかす人もいますが、こういうのはプロのピアニストだから許される演出です。でも内輪で弾くときにやってウケを取るのはありです


こうしてA部が再現したら、ようやく気が休まる・・・わけではありません。

そこはショパン先生、終盤に向けてもうひと波乱用意されています。「ここでもうひと波乱」「まだ意外な展開が」という演奏表現をしていただきたいと思います。


わたしはショパンのほとんどすべての曲の楽譜を見て、音楽学的な勉強をしていますが、この作曲家のすごさは冒頭部とコーダに特に強く表れていると思います。どの曲も印象的な開始をして聴衆をひきつけ、さまざまな展開があったのち、わずかな名残惜しさをもって終わります。このバランス感覚が抜きんでて優れていると思います。

コーダ作曲が最悪なのはいうまでもなくベートーヴェンです。彼の交響曲は終わりそうでなかなか終わってくれませんよね(笑)。ショパンはベートーヴェンのそういう冗長性が嫌いで、過不足のないバッハやモーツァルト的な楽曲を理想としていたため、すっきりとした構成を意識していたと思われます。「英雄ポロネーズ」のまるまる1ページかかる序奏や、バラード4番の長大なコーダは異例中の異例といってよいでしょう。そしてその「異例」がまた突出して素晴らしいことに至っては、もう天才というほかありません。


ペダリングのちがい:電子ピアノとグランドピアノ

最終回、長いですね~。もう少しお付き合いください(汗)。

私はいつもこんな感じで演奏を作り上げています。デュナーミクは楽譜に従いますが、ペダルは楽譜に書かれたことをかなり変更します。ショパンも言っていますが、ペダルは演奏者の裁量によって変更してよい、むしろ変更すべきです。ピアノの個体差や調整によって当然ペダリングは変わります。また打鍵&離鍵が甘い人は、どうしてもペダルが濁ります。なので、指の動きが悪い人はペダルをしっかり上げることを意識すべきでしょう。大抵の人は、タイミングよくペダルを踏むことはできても、離すタイミングやペダルを上げる速度が遅いようです。響きを消すときは、ペダルをスパッと上げることを意識しましょう。

電子ピアノで練習している人は、グランドピアノを弾くときにペダル操作の違和感を覚えやすいので特に注意してください。練習時から、グランドピアノで弾くことを想定できるようになりましょう。でも、この曲を弾くような人はそんなこと慣れっこだと思いますけれども。


演奏テンポと仕上げ方について

まずは4分音符=120を目標にします。

ショパンエチュードの4拍子系の速い曲は、このテンポでブレずに安定して弾けるようになれば、ひとまずOKだと思います。120で弾ければ発表会などでも恥ずかしくありません。コンクールや試験では140以上で弾くことを求められると思いますが、演奏困難な小節でコケないように練習を積んでいるうちに、そのくらいのテンポで弾けるようになってしまうと思います。

楽譜指定のテンポ=176は速すぎます。この指定値に関してはさまざまな議論があると思いますが、「君がヴィルチュオーゾ(名人)ならこのくらいのテンポで弾けるんじゃないの?」というショパン流の当てこすりというか、エスプリ(気の利いた冗談)ではないかと思います。

それともうひとつ、当時の練習曲集はツェルニーを始めとして無茶なテンポ設定がお約束でした。なのでショパンもその慣習に倣って、無茶テンポを設定したものと思われます。

いずれにしても、速い曲ではショパンが弾ききれた最大値を設定していると思われ、当時のピアノと現代のピアノの違いなどを考慮して、指定テンポで弾く必要はないと思われます。速すぎる演奏は、一生懸命やっているつもりでも表現や解釈が伝わりにくく、思ったほど効果的ではありません。

速いテンポでの演奏を身上とするピアニストがいますが、響きの豊かなホールではパッセージがダンゴになって何を弾いているのかさっぱりわかりません。指は速く回っているけれど、演奏では失敗しているのです。
これは素人にも降りかかってくる問題です。ちょっと広い場所になると、ピアノの音が散って自分の音が聞こえにくくなります。そのためペダルを多く踏みすぎたり、無理して鍵盤を叩いて演奏表現が行き届かなくなるのは非常によくある話です。仕上げの段階になったら、本番で弾く場所を想定して全体的な微調整をしましょう。


おわりに

練習法初回にして難度の高い曲を取り上げた結果、初中級者のみなさんがポカーンとするようなことばかり書いてしまいました。とんでもないブログを見てしまった、と思った方は申し訳ありません。演奏難度の低い曲では、その曲を初めて弾くようなレベルの方を想定して書こうと思います。

なおop.10-1練習法で書いた多くの部分は、ショパンコンクール副審査委員長のピオトル・パレチニ氏のマスタークラスおよび公演の内容に基づいています。


1665_key

写真:パレチニ氏とお弟子さん一同


す、すみません

でも何度拝見しても、パタリロにしか見えないのでw


というわけで、ショパンエチュードop.10-1練習法はこれにて終わりです(・∀・)



owari

op.10-1:Q - YOU CAN (NOT) REDO -

基礎練習の次は演奏表現を考えます。

本来は練習を始める前に演奏表現について大まかな方針を固めておくべきですが、そうはいってもたいていの人はひととおり譜読みをしてから表現に手を付けると思うので、その前提で行きますね。今回はデュナーミク(強弱表現)を見ていきます。


1.小さな単位でのデュナーミク表現

この曲はフォルテで始まりますが、1ページ目にはそれ以外の強弱指示が出てきません。テンポ指示も最初に書かれているだけです。だからといってずっと同じ音量で、一定のテンポで弾いたらどう見ても機械的なコンピュータシーケンスです。本当にありがとうございました。(コンピュータシーケンスのように弾けたらそれはそれですごいことではありますが・・・)

じゃあどうすればいいのよ?どうすれば完成度が高い演奏が出来るのよ?という話が「Q」のメインになります。

この曲は3部形式ですが、フレーズは8小節単位で成り立っていますので、まずこの単位で考えます。ざっと思いつくことを記入した楽譜が以下です。


op10-1_第3回用1


・・・ええと(汗)。

いっぱい記入しましたが、以下で詳しく説明します。


(1)アクセントを叩かない件

各拍の頭についているアクセントは、音量の強調というよりは拍頭の強調です。この曲の音型だとどうしても親指にアクセントが付きますから、そういう風に弾かせないためにわざわざアクセント記号をつけています。アクセントを過度に強調すると音楽の流れを壊してしまいますのでほどほどに。プロでも「ガン!ガン!ガン!ガン!」と叩く人がいますが、そういう演奏は美しくないです。アルペジョの奔流の中にキラッキラッと輝きを添えるイメージがよいでしょう。ダイヤモンド、それともスワロフスキー?あなたの自由なイメージで輝きを加えてほしいです。


(2)2小節単位のデュナーミクとアゴーギクの件(ブルーの大きな<>)

2小節がパッセージの最小単位になります。アルペジョが上がるときに盛り上げて、下がるときに静まっていくイメージです。この記入はクレシェンドとディミヌエンドではなく、音楽の呼吸、あるいは音楽の幅や深さと捉えてください。<で幅が広がって、>で狭まります。<の始まる瞬間に息を吐き終わって、吸い始めるのがいいと思います。開始部分は左手でドを弾いた瞬間に「フン!」と息を吐き、右手の上昇にあわせて息を吸い始めるのです。そうすると、自然に<>のニュアンスがつきます。指の力で意識的にクレシェンド&ディミヌエンドしても、なかなかうまくいきません。こういう強弱表現を盛り込むことで、人間の生理にあった自然なフレージングを奏でることができます。

また、各小節の冒頭で瞬間に加速して拍を進行しながら少し速度を緩めるとより一層迫力があり、なおかつ聴きやすい演奏になります。とくに下がりきった4拍目ではそれとわかるくらい緩めたほうが、おさまりがよいと思います。が、やりすぎは禁物です。この速度調節をアゴーギクといいます。

2小節単位のアゴーギクとデュナーミク、考えたことがある人いますか?

あまりいないのではないかと思います。op.10-1や10-8、25-12といった曲のマスタークラスで100%指摘されるのがこのポイントです。指摘されなかった人を見たことがありません。「そんなこと考えなくても自然に出来るよ」という人は、これまで蓄積された経験からそのような表現が生み出されるのであって、けっして無から生まれているわけではありません。

日本のピアノの先生はメカニックを重視しすぎるあまり、表現力の教育が足りなさすぎるように思います。表現力は作曲者の心情を推し量ることではなく、れっきとした技術です。なので、教えてもらわないと身に付きません。


2.和声変化の表現

和声が固定されるのは最初の2小節間だけで、あとは常に変化します。特に最後の2小節は和声が大きく動きますので、聴いている人にもそれとわかるように伝える=表現する必要があります。

明らかに色合いが変わるのは7小節目です。ヘ短調の和音が出てきます。これを下属短調(サブドミナント・マイナーという呼び方がより一般的)といいます。その次の8小節目が属7和音です。和声法では主和音= I 、属和音= V 、下属和音= IV 、と書きます。

最もよくある進行は I ⇒ IV ⇒ V ⇒ I という順番になりますが、ドレミファソラシドの中で3度と4度を組み合わせた和音ばかりなのでちょっと味気ないです。ぶっちゃけソナチネみたいです。ここへスパイスを加えて I ⇒ IVm ⇒ V7 ⇒ I という進行にすると、あらステキ。IVmでドレミファソラシド以外の音(スケール外の音といいます)が加わるので印象的な響きになります。

ショパンはもちろん後者の進行を使うのですが、さすがにそのままIVmを使いません。バスにG音(ソ)を持ってきて、その上にサブドミナント・マイナーを鳴らします。コード記号で書くと、Fm/G。これは分数コードと呼ばれるものですが、属7和音の1小節前に属音(ソ)を鳴らすことで、より印象的に属7を導くことができます。このバスにF音(ファ)を持ってきても全く問題ないのですが、あえてG音を持ってくるショパンのセンスをわかってあげましょう。

⇒センスをわかってることを表現するには・・・

その2つ前の第5小節からすでに準備を始める必要があります。ソ~~~ファ・ミ・レ~と下がるバスをしっかり弾き、7小節目のソを重い音色でドスーンと鳴らします。体重をかけるイメージでまっすぐ下に向かって鍵盤を打ち鳴らしましょう。その上で、新たな気持ちで7小節目のアルペジョを奏して(意識的に顔を上げて上半身を起こすといい。自然に音色が変わります。)、8小節目をしっかり弾きます。

8小節目の4拍目でアクセントのついたDis音があるので、これはしっかり強調しますが、いきなりアクセントをつけるのはとても不自然なのでその前のレーソ-ファ-シの弾き方を工夫します。まず「レ」にアクセントをつけず、ソファシで少し速度を緩め(この3つを気持ちマルカートに弾くとか、クレシェンドするとか、いろいろやりかたがある)、おもむろにDisを弾きます。

ここまでやると、9小節目の主和音へつながる展開に説得力が出るのと同時に、「スケールが大きな演奏になりそう!」という期待感を聴衆に持たせることができます。


コンクールや試験では、エチュードの演奏は冒頭8小節と最後の8小節で8割がた評価が確定するらしいので(8-8-8の法則)、よく練習してください。特にコンクールでop.10-1を演奏する場合、冒頭がよくないとあとから盛り返すことはほとんど不可能だと思います。


ということで長くなったのであとは次回に続きますが、8小節単位の構成を意識して演奏表現を作っていけばそれほどおかしな演奏になることはないと思います。次回はもっと大きな単位での表現を検討します。


※参考までに:op.10-1の名演奏

ルイ・ロルティ(手がよく見えます)http://www.youtube.com/watch?v=tH6za0Cp4RA

マウリツィオ・ポリーニ(定番DG)http://www.youtube.com/watch?v=nMM6h9Yf348

マルタ・アルゲリッチ(in ショパコン)http://www.youtube.com/watch?v=53kUnwM93wo

アルゲリッチすごいですね。8小節目に到達する前に「え!?この人は!!」みたいな衝撃が走ります。でもちょっと弾き飛ばしすぎ・・・


つづく

ひとやすみ用BGM

予告2

BGM(おやくそく)

有害なペダル

凶暴なテンポ

枯渇したモチベーション

次々と生まれる新しい楽譜

おびただしいCD

ありとあらゆる解釈

ありとあらゆる正義

ありとあらゆる誤り

とるべき道はいくらでもあるはずだ

私達はすべてを未来にたくすことにしよう

次回、ショパンエチュードop.10-1 最終話:A

さぁて、この次もサービスサービス!


今回の次回予告はこの漫画の最終巻から引用しました。サブタイトルは勝手な想像ですw

op.10-1:破 - YOU CAN (NOT) DO IT -

<練習方法>

もくじ

(1)和声進行の把握

(2)ゆっくり弾いてみて難所を把握

(3)op.10-1養成ギプス

(4)ルイ・ロルティが見せるコンフィギュレーション


というわけでお待ちかねの練習方法アドバイスコーナーです。

コルトー先生の練習法がひどい内容なので-ブラームスのエチュードかよ、というほどしんどい-わたくしHarnoncourtがもうすこしやさしく、ツェルニー40番終わったばかりなのにこの曲を弾きたいとか言い出す勇気とやる気と元気のある人のために練習方法を説明します。




(1)和声進行の把握

まず和声の流れを把握する必要があります。

多くの指導書は「コラールで弾きなさい」と書いていますが、じゃーーん、じゃーーん、と和音で弾いても面白くもなんともありません。アホか。こんなの2小節目で飽きてしまいます。4小節目では8割以上の人が寝ます。しつこいようですが、この曲はバッハ平均律集第1巻第1番プレリュードのオマージュなので、その曲と同じようにアレンジして弾くべきです。こうするとわかりやすく面白いし、原曲どおりに弾けない人でもこの曲の魅力を味わうことができます。

譜例:ショパンエチュードop.10-1 超かんたんアレンジ  編曲 by Harnoncourt

10-1超簡単アレンジ


ぷりんと楽譜の難易度づけを意識してみました。こういう風に書き直すと、右手の旋律は和声の補強と装飾にすぎず、むしろ左手が音楽の推進力になっていることがわかるでしょう。

ピアノの初心者の人は、ぜひこのアレンジに作り直して弾いてください。多くの人はショパンエチュードだとは気づかずに「綺麗な曲だなあ」と誉めてくれるでしょう。「ところで誰の曲?バッハ?」と尋ねられたら「ショパンの練習曲をアレンジしてみたんだよ」とドヤ顔で答えましょう。




(2)ゆっくり弾いてみて難所を把握

ごくゆっくりと、最初から弾いてみます。

慣れない人は最初の小節からすでに弾きにくいことと思いますが、あきらめないで先へ進みましょう。22~26小節目あたりが鬼門になる人が多いと思います。

10-1難所

このあたりは1-2や3-5を限界まで伸ばしても届かない人がほとんどだと思います。こういう部分をどのように処理するかがop.10-1のポイントになります。届かない箇所の前後を別グループとして扱い届かない地点へ跳躍する、という弾きかたがいいように思います。22小節だったら532をグループに見立て、そこからG(ソ)へ跳躍するイメージです。カンパネラと違って白鍵に飛び込まないといけないので難しいですが、飛んで入る先の鍵盤を良く見て低空飛行でスパッと移動すればミスなく弾けます。ノンレガートでOKと考えましょう。(黒鍵のほうが跳躍は容易。ああ見えてリスト先生は優しいんです。)

いずれにしても、次項の練習法で具合のいいやり方を検討してください。左手を参加させれば余裕で弾けますが、コンクールや試験はもちろんピアノ教室の発表会でもかなり恥をかくと思うので甘えないようにしましょう。みんなここが難しいことは知っていますし、注目しています。

この部分が難しいって人が多いけれど、左手で同じようなことをやってるテンペストの終楽章は初心者でも弾いたりするよね。まさにあれ。あのやり方を思い出しましょう。「テンペストと同じ」って書かれると弾けそうな気になるでしょ。しかもテンペストと違って延々つづくわけじゃないし(笑)。

これ以外でも弾きにくいな~と思う箇所があったら、この時点で楽譜に「ここは弾きにくい!」と書き込んでおきましょう。そこを重点的に練習すればよいのです。

私が初めてこの曲を弾いた時は、冒頭の小節から弾けませんでした。

なぜ弾けないんだろう?なぜこんなにも弾きにくいんだろう?

弾けない理由を自分で考え理解するのはとても大切です。これを理解しないことには練習が始まりません。私が最初に気付いたものは以下の通りです。

  • 10度のアルペジョなんか弾いたことがないから手が広がらない。そもそも10度なんて届かない。
  • ドソドミって苦労して上がってすぐ親指でドが弾けない。ドソドミ、ここでひと休みしたい。
  • 上がるより下がるほうがラクな気がする。⇒ここポイントなので、あとで解説します。
  • 10度以上のアルペジョになる小節は完全にお手上げ。

完全に八方塞がり、詰んだ状態です。コルトー先生がオススメする練習方法もやってみましたが、大リーグボール養成ギプスのような辛いだけの訓練でした。コルトー版の楽譜を持ってる人はぜひ見てください。ひどいです~。

ということで、わたしはここで一旦この曲の練習をあきらめ、その間ゴチャゴチャと他の曲を練習しました。I CAN NOT DO IT ! です。そうこうしているうちにいつのまにか上達して、「ダンテを読んで」や「英雄ポロネーズ」といった曲までなんとか弾けるようになってきました。

でも、ときどきショパンエチュードの楽譜を取り出して眺めて考えていました。

どのようにしたらこのパッセージを弾けるようになるんだろう?

指間の拡大をするならエオリアン・ハープが最適で、あれを勉強した時にやった練習方法が使えるのではないか?ということに気付きました。そこからリベンジが始まります。




(3)op.10-1養成ギプス(やわらかめ)

エオリアン・ハープの練習の時にやった改変-パッセージの一部を和音にする-を応用して、下記のような改変し、この形で練習します。

10-1-1


すべての小節をこのパッセージに変形して練習します。弾きにくい小節はコンフィギュレーションをよく検討して、弾きやすい手首の位置を探してください。そうすれば誰でもop.10-1が弾けるようになると思います。下がる時より、上がる時のほうがむずかしいこともわかると思います。下がるのはテニスでいうフォアハンド、上がるのはバックハンドの向きに腕を動かします。たいていの人はフォアは得意ですがバックは苦手。全く同じことがピアノ演奏でも起こります。このパッセージを上手く弾くには、上がるときと下がる時で動き方を切り替える必要があります。単純に逆回しにしてもうまくいきません。ではどこから切り替えるか?という話になりますが・・・

最高点の音を弾いたときに下降動作を開始

つまり、ドソドミの「ミ」は上りの終わりではなく、下りの始まりです。最高点で切り替えるようにする、これを意識しましょう。この曲を弾く前にop.10-8をやってるのが普通のような気がしますが、あれは最高点から落ちる始まり方をするので、最高音=下りの始まりということが理解しやすいです。


ここまでくればもう YOU CAN DO IT ! あとはロベルト・シューマンの気分になっていろいろな変形を楽しみましょう。たとえば、下記のように和音で弾く場所を1つずらしただけで、難度や練習効果が変化します。ハノン的に付点音符などで弾くのもよいでしょう。

10-1-2

コルトー先生はド+ソドミ和音に分割して全部弾け、と無茶なアドバイスをしていますが、手の小さな日本人には弾けるわけがありません。ただし、22~26小節のような場所を練習する時はこの方法が非常に有効です。





(4)ルイ・ロルティが見せるコンフィギュレーション

この曲を練習していくと、すべてのパッセージがドソドミと同じやり方で弾けるわけではない、ということにすぐ気付きます。アルペジョを構成する音の並びに合わせて手の位置や角度を細かく調整しなくてはいけません。コンフィギュレーションの使い分けです。ルイ・ロルティ先生がこの曲を弾いている動画を入手したので、これをキャプって先生のコンフィギュレーションについて説明します。まずは3小節目から4小節です。手首と肘の使い方に着目してください。手首の使い方は音域に変わらずほぼ一定です。

10-1Lortie解説用修正

番号

画像 解説

mp4_000007200

ド-ラ-ドをひとつかみにするコンフィギュレーションです。まだ弾いていない上のドの鍵盤に4の指を置いているところに着目してください。4を伸ばすことで同時に3の指がくっついていきます。勝手に一緒に動いてしまう特性を利用したコンフィギュレーションです。あとは3の指をドの鍵盤に滑り込ませれば容易につながります。また、つかみやすいように「くの字」のように肘が曲がっていることも重要です。腕を身体側に意識的に引きつけています。この角度は音域によって変化します。左手も重要で、腕を身体の方に引きつけながらまっすぐ下に打鍵します。こうすると重みのあるフォルテになります。

mp4_000007840

ド-ラ-ド-ファのファを弾いた瞬間です。すでに親指がドの鍵盤の上にセットされています。駆け上がりながら親指を引きつけます。ファを打鍵する瞬間には親指をここまで持ってこないと次が間に合いません。

mp4_000008320

最後のラまで上がってきました。「くの字」の肘は上がりながら身体から離れて(バックハンドの要領で)、この時点では鍵盤に対して直角になっています。左手にも注目。すでにF#の上に指がセットされています。これはすごく重要です。ロルティは4と5の2本指で低音のF#を弾こうとしています。このテクニックは重みのある低音を出すためにとても重要です。

mp4_000008480

最高音に到達しました。打鍵した瞬間にはもう下りの動作に変化しています。上から下に打鍵するのではなく、右上から左下にすくい取るように打鍵するとよいでしょう。私はしなやかな空手チョップのイメージでこの音を弾いてます。打鍵前にごくわずかな溜めができ、演奏の印象がよくなります。ここを正確すぎるインテンポで弾いたり先走って突っ込む演奏は、非常に印象がわるいです。

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下り途中。同じ鍵盤を弾いている③と比較してください。腕の角度は少し内側に、手首はかなり内側を向いています。それにつられて手首がわずかに鍵盤の奥方向に入っています。いずれも下り方向へ進むためのコンフィギュレーションです。この微妙に違うコンフィギュレーションを使い分けないと上下をスムーズに弾くことができません。上下どちらかが下手な人は、コンフィギュレーションを使い分けず強引に弾いているのではないかと思います。プロでもよくいます。それで弾けてしまうから工夫しないのです。
マウリツィオ・ポリーニ(DG盤)は、このあたりを検討してもっと完成度の高い演奏を目指して欲しかったですね。録音は未来永劫残ってしまうので、対策を打てる瑕疵はすべて対策した上で録音すべきです。それこそが真の完璧主義者ですが、イタリア人にそれを求めても仕方ないよね、というのが私の認識です(ただしミケランジェリを除く)


※頭の位置の動きにも注目してください(アルシンド的な意味で)。ほとんど右手しか見ていません。この曲は左手を見る必要はほとんどありません。

黒鍵が混じった場合は以下のような感じ。手首の位置が鍵盤の奥に入り込んでいます。


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指は伸ばし気味。黒鍵を弾く時に、伸ばしたほうが弾きやすい人と、アーチ型の指でピンポイントに打鍵したほうが弾きやすい人がいます。自分がやりやすいように弾いてください。ここに来る前にop.10-5で練習しているとは思いますが。
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手首の位置が少し上がっています。これはロルティの特徴で、黒鍵の多いフレーズを弾く時に自然に手首を上げたコンフィギュレーションを取るようです。op.10-2や25-6の映像で非常によくわかるのでそのときに説明します。




つづく

BGMはもちろん宇多田ヒカル"Beautiful World"PLANiTb Acoustica推奨。


予告2

BGM(おやくそく)

凍結したように指が硬直するレスナー

最初から廃棄されたかのような演奏表現

ドグマから湧きあがるような重低音

胎動する右ペダルとウナコルダ

ついに集う、古今東西の名演奏

op.10-1の完成を望む人々の物語は何処へ続くのか

次回、ショパンエチュード練習法op.10-1:Q

さぁて、この次もサービスサービス!

op.10-1:序 - YOU CAN (NOT) RECONIZE -

<練習目的>

幅広い音域をやすやすとつかめるようになるための練習曲です。指間を拡大し、手のひらの柔軟かつ迅速な開閉をマスターすること、さらには音域ごとの最適なポジションやコンフィギュレーション(手の形・位置)を学ばせるのが目的です。決してアルペジョの練習曲ではありません。アルペジョを弾かせるのはあくまでも手段です。情けないことにほとんどの解説者は手段と目的を取り違えています。ピアノの先生が「この曲はアルペジョの練習ですよ。」とか言ったら、先生を変えることを真剣に考えたほうがよいでしょう。

この目的を理解-RECONIZE-して勉強するのと、単なるアルペジョの練習として勉強するのでは大違いなので、練習を始める前に十分に意識しておいてください。

私は原典版と同時にコルトー版のショパンエチュードの楽譜を購入することを推奨しますが、その理由はこういった解説部分に書かれていることが優れているからです。でもコルトー版のこの曲の練習法は難しすぎるのでやめてください。私はコルトーの練習法でやろうとして見事に自爆しました。他人のいうことを鵜呑みにしてはいけない、というすばらしい人生経験になりました。


この練習曲がバッハの平均律クラヴィーア曲集第1巻第1番のオマージュというのは誰でも知っていると思います。この曲ですね。

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これがショパンの手にかかるとこの有様です。

10-1譜例1


どう見ても音域を拡大しまくっています。本当にありがとうございました。

IMSLPから楽譜を取ってこようと思ったけど、Karl Klindworth校訂の楽譜(真っ先に出てくる)の右手の拍頭になぜかスタカートが入っていたヽ(`Д´)ノ。こんなんじゃショパンの意図した練習目的が果たせないじゃんかよー。スタカートが付いただけで何もかも台無し。ということでエキエル編ナショナル・エディションをスキャンしました。


実はこのパッセージはショパンのピアノ協奏曲第1番第3楽章などで頻出するパッセージが由来です。たとえば下記(128小節)。

10-1譜例2


赤くマーキングしたところがop.10-1と同様なパッセージですが一方通行に上下するのではなく、132という運指で折り返しが入っているので、いっそう正確なコンフィギュレーションが要求されます。op.10-1も一方通行ではなく、折り返しを加えて変奏するとよい練習になります。

ここで注目して欲しいのが、青い矢印が付いている部分です。ここは10-1の要素に手首のひねりが加わるのでさらに難度が高くなっています。

ショパンのピアノ協奏曲はこういう変なパッセージがたくさん出てきます。これがショパンの手癖-巻き込むようなアルペジョ-で、特にこの時期のショパンのピアニズムを特徴づけるパッセージになっていますので、ぜひとも注意して聞いてください。ワルツ14番でおなじみですね。

コルトーはop.10-1もこういう感じに手首のひねりを加えて練習しろ、と無茶なことをいってます。たとえば冒頭を1245と弾くのではなく2124で弾けと。ひねりが加わったアルペジョは同じ第1楽章の205小節をはじめわんさか出てきますので、協奏曲を弾く人にはいいアドバイスかもしれませんねー(棒読み)。


・・・ぶっちゃけショパン先生はこのパッセージをうまく弾けなかったんじゃないのかな?

意気込んで協奏曲を書いてみたはいいけれど、このパッセージ弾けない、とか、ミスりそうで怖い、みたいな。だから自分のために&自分の曲を弾いてもらうために練習曲を書いたのではないかと推測しています。op.10-4でも決めの部分やラストで10度アルペジョ出てきますから、この曲をさらわないでいきなり弾くのはちと難しい。(Harnoncourtは経験済み)


つづく

ここでティータイム。

BGMはもちろん宇多田ヒカル"Beautiful World"推奨。


予告2

BGM(おやくそく)

第1小節から途方にくれる初心者

まったく進まない譜読み

強行される禁じ手 -左手参加-

次々と現れる無茶なパッセージ

次第に壊れてゆくレスナーのモチベーションは

果たしてどこへと続くのか

次回、ショパンエチュード練習法op.10-1:破

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IMSLPショパン(英語)
さまざまな版が収録されており、演奏指示などの記述がバラバラで混乱するので、きちんと勉強したい人にはおすすめできない。
ショパン初版譜
英仏独3カ国の初版譜が比較できる。演奏指示などの記述がバラバラ(以下略)なので、調べものをしたい人向け(英語)
ショパン自筆譜ファクシミリ
自筆譜が確認できる。読みずらいがちょっとした確認をしたいときに非常に便利。アクセント記号やsf&fzで迷ったらここ(英語)


楽譜販売サイト
ナショナルエディション直販
PayPalユーロ決済。8ユーロで日本への配送可能。(英語)
ショパン自筆譜ファクシミリ
PWM。随時追加される模様。op.10の一部が散逸していて全曲揃わないのが非常に残念。(英語)

amazonショパン楽譜@洋書カテ
ヘンレ版
ヤマハ等の店頭で買うより安価
ドーヴァー版
やはり店頭より安価。楽譜サイズに注意。ミニサイズのものが混ざってます。

その他
ファツィオリ
近年ロルティが録音に使用しているピアノ。スタインウエイとはまた違った魅力。
シャンドス
ロルティのCDを発売しているレーベル(英語)
NationalEdition.com
ナショナル・エディション総本山(英語)
国際ショパン協会
ショパンコンクール主催(英語)
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