普段どうやって付点音符を弾いてますか?

付点音符

タッカタッカ=付点音符ですが。

じつはこの表記がすでにヤバイです。できれば「タッッカタッッカ」としたいです。付点音符のリズム表現が甘い人は「タッカタッカ」で育った人だと思います。そうですわたしです(汗)。自分の付点音符の弾き方が甘いと気付いて以降、付点音符に関して神経質になりました。

付点音符で書かれていたら通常は3:1で演奏しますが、ショパンにおいては2:1になることもあります。このトピックは、それを理解してない人が多すぎるからなんとかしましょう、という問題提起です。

バロック時代だと付点音符=複付点音符として弾く、みたいなローカル・ルールがあったりして、もうわけがわからないのが付点音符の世界ですが、ここはひとまずショパンに焦点をあてます


ショパンの困った癖


ショパンは本来8分の12拍子であるべき曲を4分の4拍子と表記することが多いです。バラードや舟歌を含むノクターン系の曲ではきちんと8分の12拍子の表記を使っているので、2:1の表現は普通にできることが多いですが、4分の4拍子で書かれると困ります。楽譜の表記習慣的に三連系のパッセージに乗った付点音符は2:1で演奏するお約束になっているのですが、それにしてもわかりにくいですね。

(1)前奏曲op.28-9

prelude28-9


上の画像はミクリ版の楽譜ですが、他の多くの楽譜はこの記法になっています。なので、右手の付点音符パッセージを3:1で弾いている人が多いです。でも、それは間違いです。この付点音符は2:1で弾くべきです。根拠は下記の自筆譜です。

prelude_op28_no9

※この画像の二次使用(コピー、印刷、配布等)は厳禁です。

三連符と一致した複付点音符につづく32分音符をわざわざ後ろにずらしていますね(ずらし忘れもありますが)。付点と複付点を使い分けていることから、どう見ても複付点の場合だけずらす、ということで確定です。本当にありがとうございました。

なおナショナル・エディションでは、下記のようにこの自筆譜の記述を反映させています。

op28-9NE

※この画像の二次使用(コピー、印刷、配布等)は厳禁です。

私はナショナル・エディションの信奉者というわけではありませんが、前奏曲9番のこの記譜法は英断だと思います。

ちなみに木枯らしのエチュードも同様に2:1で弾くべきと思われます。印刷用最終稿の写しを持っていますが、ショパン本人の手によるものではないのでここでは掲載しません。


(2)バラード4番

ballad4


前奏曲9番と同じことをやってますので、前奏曲と同じように2:1で弾きます。

・・・が、ここはコーダ前で最高潮に盛り上げたいパッセージです。なので小節の冒頭の音符を長めに取って、右手=2:1:1、左手=3:1で弾くようにすると、より劇的な演奏表現になると思います。いずれにしても、右手の32分音符と左手の音は同時に弾きましょう。

ここを同時に弾かないようにするために遅く弾いて32分音符をガツンと後ろに回す人がいますが、結果としてより一層表現が盛り上がるので、ケガの功名というか、ぶっちゃけそれほど神経質にならなくてもいい部分だとは思います。

※結論

テンポが遅いop28-9はきわめて慎重に弾いて欲しいけれど、速いパッセージではあんまり気にしなくてもいいよもう(かなり投げやり)。


ツェルニー先生の例


Czerny30-2

ピアノレッスンをしている人はよくご存知の、ツェルニー30番練習曲集の2番目の曲です。

この付点(複付点)音符の弾き方ですが、左手の音と一致させていいと思います。最近の楽譜の解説だと「一致させていいよ」と書いています。しかし、ほとんどの先生は一致させないように正確に弾きなさい、と言うと思います。わたしはそういう風に習いましたし、先生たちもそう習ったからだと思います。

現実問題として、ツェルニー30番に入ったばかりのレスナーにこれを厳密に弾かせるのは困難ですし、この曲の練習目的は左手のアルペジョと右手のアーティキュレーション対比にあるわけで、付点を厳密に弾く練習曲ではありません。なので、この部分にこだわるあまり本来の練習が滞るようでは困るわけでして、両手を一致させたほうがいいと思います。

この曲を指定テンポで弾けるレベルになったら、正確なタイミングで16分音符を入れなければなりません。左手と一致させるにしても、一致させないにしても、正確に弾けることが重要です。ツェルニー30番の指定テンポはそれほど無茶なものではなく、40番を終えている人なら十分に弾ききれるレベルだと思います。ツェルニー30番は円熟期に作曲された練習曲集なので、初級者への対応がよく考えられています。その分だけ地味に難しいです。この曲集にはテクニックをそのままショパンエチュードに適用できる曲もあります。初級用の練習曲集だからといって甘く見ないで、しっかりと練習してほしいと思います。